さらば長き眠り

KATATI.com Top-page 2002/08
KATATI.com Top-page 2003/01

 原尞さんの名作の題名をお借りして申し訳ないかぎりだが、およそ十数年ぶりにカタチコム復活。サイトデザインは、コソボの首都プリシュティナにあるウェブデザインスタジオ Laboratorによる Kalium というテーマを拝借した。
 一時期、仮にもウェブデザインで食べていた身としては自分でデザインすべきところなのだが、自サイト制作という「締切のない案件」ほど遅々として進まぬものはなく、そうこうするうちに世の中は CSS3、Html5、Bootstrap などの新しい地平へと歩を進め、追いつくためにそれらをぼちぼち学んでいた日には、自サイトの再開なぞますます遠退くばかり…。

遙かコソボのデザインスタジオ

 そんなおり、海外のデザインサイトを無目的に渡り歩いていたら、このテーマに遭遇した。スタジオの名刺にも使っているカタチの “K” のロゴと、このテーマのカリウムの元素記号 “K” のロゴ(こっちはいかにもカリウム鉱石っぽい)の鋭角的な感じが似ていたことに惹かれ、モノトーンなテイストにもひと目惚れしてしまった。
 いま現在、国際社会はコソボをセルビアの自治州にとどめるか独立国として承認するかで割れている。2015年の資料によるとコソボの独立を賛成する国は日米英仏独を含めて111カ国、反対の国は中露西印などの85カ国らしい。未来がいまだ定まらない国の、古きオスマンの血を受け継ぐデザイナーさんのお世話になろうとは、世界は広くて不自由だったりするが、インターネットではどんな場所も等距離でフラットだとつくづく思う。

どこまで日本語化(非カタカナ語化)できるか

 ところで、このサイトをざっとご覧になられた方ならお気づきと思うが、可能なかぎり日本語化している。カタカナ語さえ出来るかぎり追い出した。幸いこのテーマには日本語ファイルが入っていなかったので、poやmoの翻訳ファイルも勝手に作らせてもらった。
 ブログ黎明期にはユーザビリティのために出来るかぎり日本語化したサイトをごく稀に見かけたものだが、現在ではカタカナ語だろうと英語だろうと、ホーム、カテゴリー、タグ、ポスト、アーカイブ、サーチくらいなら周知されているし、むしろこれらに好き勝手な日本語を付けられるとかえって分かりづらくなるだろう。
 にもかかわらず、あえてそれをやったのは、もちろんユーザビリティのためではなく、ひとつは趣味で(趣味かよ)、もうひとつは、この十年間で私の仕事が日本語書籍の造本(ブックデザイン)に集中してきたことが理由にあげられる。一冊の本を仕上げる間にじつに多くの用語や用法の発見がある。その面白さに魅せられて、ウェブ用語の日本語化でも遊んでみたくなった。欧文タイプフェイスという、それ自体ですでにおしゃれなデザイン要素による、一見クールなサイト作りに飽きてしまったせいもある。

サイトは本のようなもの

 ワールドワイドウェブとは膨大な文書同士がハイパーリンクで結びついた世界であり、個々のサイトもまた同様の構造を持っているが、人間がそれを利用する以上、慣れ親しんできた文書構造のアナロジーとして、知らず知らずのうちに「書物」の構造を踏襲せざるをえない。表紙または表題紙にあたるのは最初に訪れるホームページ、目次は記事題名と概要が並ぶページ(ブログの多くはここがホームページ)、本文は個別のポスト、図録や附録資料はカスタムページ、あとがきや著者履歴はアバウトのページ、細目次はサイトマップ、索引はサーチ、奥付はコンタクトのページ、といった具合だ。
 趣味のためとはいえ、独自に日本語化(非カタカナ語化)するなら書籍の構造に倣ったほうが、まだしもユーザは迷わないし、構造に日本語名をつける側としてもやりやすい。

 Mac(OSX Mavericks 以降)と Windows(8.1 以降)に共通して「游明朝」と「游ゴシック」が搭載されたことも、日本語サイト立ち上げの後押しになった。それらを金を払って手に入れた立場としては複雑な思いがないわけでもないが、気に入ったタイプフェイスを他機種のプラットフォームを気にせず使えるのは楽でいい。とくに游明朝という美しいタイプフェイスが使えるのはありがたい。ありがたさを噛みしめながら、本文にも見出しにも使っている。ゴシックのほうが読みやすいという意見が圧倒的多数と思われるが、なにしろ趣味だから、軽やかに黙殺させていただくことにした。